僕らは運命の意味を探していた。
そしてただ一人を除いて僕らは足並みが揃った。

 「なんでそんな事を、この社長の息子である私がやらなくちゃならないのさ。」

 眼鏡をかけたワックステカテカの気弱そうな男は、弱々しくそう叫ぶと青ざめた顔つきで教室から逃げ出していった。

「あっ、おい待てよ……。」

 僕はそう制止したが、時すでに遅し。絶望の言葉を何度も口にしながら、転倒を繰り返し足取り重く廊下へ走っていった。

 やばい、このままじゃあいつの命はない。
別に確証があった訳ではなかった。もしかすると、僕の感覚的な考えだったのかもしれない。

 僕はそう心で呟くと、正面にいたゲームマスターがおもむろに言った。

「気づいたんだね、真道くんは。」

「心を読んだのか……。」

 僕が言うと、ゲームマスターは見下したように言った。

「まあね、とりあえず立場的には神と同じだから。一通りのことは出来るのさ。」

 という事は、ゲームマスターへの直接攻撃は一切できないという訳だ。僕らが腹いせで手を上げても、魂胆を見透かされてゲームオーバー。逆に返り討ちに合うだろう。

 そんな新たな恐怖感を抱いた僕に、ゲームマスター重ねて尋ねた。

 「何で、気づいたのか教えてくれるかな。」

「あれだけ心に隙のある人間が、この残酷な世の中で生きていけるわけがない。飲み込まれるのがオチだ……。」

 そして僕の目の前でそいつは、僕の予想通りの展開になっていく。

 地面から突如出現した真っ黒い渦に飲み込まれて、一瞬のうちに消えていった。現れたのはおどろおどろしい『黒い手の数々』だった。

 それに捕まった金持ち息子は為す術もなく、怪異的な力で引きずり込まれた。

 「助けてくれよ。死にたくない……、俺は死にたくなよ。誰か……、誰かー!」
「哀れなやつだな……。」

 司令塔がポツリと呟く。その端的な一言が金持ち息子の状態を上手く表せているような気がした。
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