僕らは運命の意味を探していた。
 不安感が、来海の眼鏡の奥からも伝わってきた。

 どうにか笑顔を作ろうと努力しているみたいだが、所々に滲み出るじめっとした表情を、拭いきれてはいなかった。

「ありがとう……。」

「いいって。俺だって不安で堪らないから。お互い様だろ?」

 にわか雨の外、俺と来海は手を繋いで傘を差しながら帰っていった。

 それは、来海の手の震えがおさまりそうになかったからである。

 俺らは不安で仕方ない気持ちを押し殺しながら、弾まない会話を重ねて、帰路をゆっくりと進んでいく。

 俺は、来海の手が小刻みに震えているのを感じて、一層握る力を強くした。

「俺は、明日から毎日お見舞い行くつもりだけど、来海はどうするんだ?」

「さすがに毎日は行けないけど、行ける時に必ず顔出すわ。二人が心配だもの……。」

 学業成績の良い来海は、それだけ努力の量も多い。週四日の塾に加え、一日十時間の勉強。

 医学部志望の彼女は、夢に見合う努力を重ねていた。

「まあ、無理しない程度にしろよ。体壊したら元も子もないからな。」

「うん、ありがと。……というか、やけに優しくない? どうしたの?」

 不気味そうに笑う来海に、俺は平然とした調子で返した。

「単純に余裕がないだけ。いつものテンションでいる気分でもないしさ。」

「……そっか。」

 そして会話は終了した。

 恐らく、続けようと思えばまだいくらでもやりようはあった。

 でも来海はその選択肢を選ばなかった。あえてそうしたのだ。

 来海は、自分の抱えている気持ちが詮索されることを嫌がった結果だと、俺は思った。 

 だから俺は一切の詮索を辞め、無言を決め込んだ。

 「じゃあね、駅まで送ってくれてありがとう。また、明日。」

「おう、また明日な。」

 僅かにオレンジが残る空。

 俺らは駅まで一緒に歩くと、来海は駅のホームに消えていった。

 
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