僕らは運命の意味を探していた。
「…………ごめん、風に当たってくる。」

 僕は消えるような声で言った。僕は極力距離を取りたかった。

 会話を重ねるほどに、僕は言葉の刃を彼らに振りかざしてしまうのが、目に見えていた。

「……うん。」

 紗南の気力の無い相槌に胸を痛ませながら、僕は足早にあの場所に行った。

「……あき。」

 この場所に来ると、二人で過ごす毎日を思い出してしまう。

 昇降口前の階段、そこはもう僕と彼女の『思い出の場所』という定義に変わっていた。

 日陰でも汗ばむくらいの気温と日光量があるこの世界。

 それでも、涼しい風は吹いているし、夜には過ごしやすい気温まで低下する時間帯も訪れる。

 今日で十八日目。ノルマ的に言うと、今日を入れてあと三日。

 心もすでに粉砕されて、立っているのがやっとだった。

 ここで僕の現状について考えてみる。

 僕に抗う力が残っているのか? 

 いや、もうタンクは空だ。

 じゃあ、やけくそで自分の体を顧みず、無理をする覚悟はあるか? 

 無理なんてしなくても、そんな体力余裕だ。

 まあ、体力なんて無くても、こんな自分が役に立つなら何でもするけどね……。

 僕が生きるより、あの二人が現実世界に戻って、ちゃんと過去と向き合って、それで一人前の大人になって欲しいと思っている。

 そのためにこれから僕は働こう。そうしたら僕が生きていた意味が少し見つかるのかもしれない。僕はそう思った。

 僕は記憶だけが、ほとんど完全な状態だった。もう何となく全貌も見え始めている。

 これを遺憾なく発揮して、二人のために尽くそうと誓った。

 さあ二人のため、僕の全力を出そう。僕自身が彼らに出来る最高の恩返しを始めようではないか。

 僕はそんな決心を固めて、僕は二人に気付かれぬよう、二人の視界に入りづらい出口を考えて、そこから出て行った。

 
< 85 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop