僕らは運命の意味を探していた。
僕は紗南が同情されないように、気を使って取った行動だと思った。あくまで、『私は加害者なんだ。』と、その気持ち強く感じ取れた。

「俺は、ストレスが溜まってたんだ。思春期で親と喧嘩ばかりして、時には暴言も出て。そんな自分に嫌気が差していた。まあ、八つ当たりみたいなもんだな……。」

 僕は司令官から、紗南のような体の反応は見受けられなかった。表情はどこか似通っていて、辛い経験の後の顔をしていた。

 僕は詮索をここまでにしておこうと思った。僕の勝手で二人の精神的苦痛を増やすのも、なんだか気が引けた。

 とりあえず話を本筋に戻すとして、二人の沈み具合はそれぞれの回復を待とうと思った。

「二つ報告がある。」

「どうしたんだよ、いきなり。」

 唐突に、そんな事を言い出した司令官は、右手の人差し指をピンと空に向けた。

「もう一人、ゲームマスターをいじめていた奴がいる。」

 反省しているのか疑うくらい、得意げな顔をしていた。

 しかし僕にはその伸びきった鼻を折れるくらいの、確信を持った情報を持っていた。

「ああ。それなら、友花だろ?」

「何だよ……。気づいてたのかよ……。」

 彼の表情はまさにジェットコースターだった。上がった感情もすぐさま地の底にまで落ちていった。

「二つ目なんだけどさ。これ、教室の中で見つけたぞ。何かしら、関係あるんじゃないか?」

 勢いよく司令官が提示した紙きれ。僕はその中身を見て口角を少し上げた。

「なるほどね。ちょっと紙きれ貸して。」

 ふーん、なるほどね……。

 でも、マスターがこんな簡単な暗号をよこすとは、もうスタミナ切れなのか?

「どれどれ? えっと……、x月yz日、十八、一、十九、七。頭を取れ。だってさ、ってどういう事?」

「まあ、いいよ。とりあえず、僕の後に付いてきて。」

「えっ、もしかして分かったの? 教えてよ‼」

「おい紗南。分かって無いのお前だけだからな……。」

「えっ。嘘でしょ? 司令官も分かったの?」

「勿論だろ。一応司令官だからな。」

「ねえ、殴って良いかな……。」

 紗南は右手を握りしめ、脳天には二本の角が見えたような気がした。

 僕らもそれに対抗するように、『教えてよ』と間髪入れずに言ってくる紗南を無視する、という策をとった。

「行けば分かるから。」

「二人共、けち……。」

 何とでも言え。

 とにかく今は一刻を争う事態だから、しのごの言ってる場合じゃないんだ。

 僕ら三人は、教室を飛び出して僕の目指す場所に向かう。

 笑う二人と、困惑する紗南の対照的な表情が伺えた。
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