僕らは運命の意味を探していた。

見えてきたモノ

 現実世界にて。

 よく分からないんだけど、来海が燃えてる……。

「いいか、敵は強大だ。得体の知れない何かだ。どんな姿形をしているのか、全く分からないけど、決して臆してはいけない。」

「なあ、来海さんや……。」

「ん? どうしたのかね、隼人君。」

 僕はため息をついて、呆れた様子で言う。

 そして左手の腕で時計を来海に見せ、右手の人差し指で何度も時計盤をタップした。

「朝五時なんですけど……。早すぎやしませんかね……。」

「いいじゃない。その分、時間が長くとれるんだから。確率も上がるでしょ?」

 来海は当然の事ようにそう言った。

 まだ涼しい気温で、陽も中途半端に昇っている。俺の瞼はまだ半開きで視界は絶望的に悪かった。

「で? どこで、なにするんだよ?」

「まあまあ……。まずはこれを見て欲しいのよね。」

 来海の提示したスマホの画面には、一好とのトーク履歴が表示されていた。その一部始終を見て、今後の方向性を考えた。

「真道の家に戻るのな?」

「ええ、必ず手掛かりはあるわ。」

 俺らにはどうして、そんな物が真道の家にあるのか見当もつかなかった。

 しかし、行動を起こさなければ見えないこともあるだろう。

 とりあえず向かうことにしよう。俺らは行きなれたあの場所に足を延ばそうと決めた。

「何の流れで、あいつん家に?」

「詳しくは、分からないけど、アツが関係してるらしいわよ。一好君が言ってたわ。」

「アツが?」

「ええ。一好君が昨日、元の中学の人間関係を洗っていた時に思い出したそうよ。アツがそんな事言ってたなって。」

 一好は、俊也と紗南の中学の同級生だった。

 交流も、人並み以上にはあったようで、アツとはかなり深い関係だったそうだ。

「中学の事は、会ってから聞くとして、まずはそのブツを回収してからね。」

 ブツって……。

 サスペンスドラマの観すぎだろ。

 まさか昨日勉強しないで、そればっか見てたとかそういうのは無いよな・・・・・・。

 俺は恐る恐る聞いた。

「昨日の夜は、何をなさっておいでで?」

「サスペンス小説呼んでたわね。たまには読書の日もいいかなって思ったのよ。」

「小説かい……。」

「なんという種類のツッコミ、それ……。」

 そして俺らは噴出した。

 何か爆笑を取るような秀逸なボケも、スマートなツッコミも全く無かったはずなのに、心の底から面白いと、俺には思えてしまった。

 張り詰めた世界に、緊張の糸が解けたかのような雰囲気が漂っている空間が、堪らなく楽しかった。

 こんな時間が長く続けばいいのにと。俺は切に願った。

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