内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 それから二年と少し――。

「がんばれー、ほらほら」

 つかまり立ちを覚えた晴太が、今まさに一歩を踏み出そうとしている。

「大丈夫大丈夫、おいで」

 いっちょ前に顔をしかめながら気合を入れて、さあ一歩。

 二歩目で撃沈してしまった。

「あー残念、でもよくがんばったね。えらいえらい」

 晴太はもうすぐ一歳になる。これで歩き始めたらますます目が離せないな。

 ここは琵琶湖が見える公園だ。

 十二月の風は冷たいが、明るい日差しのもと晴太とのんびりを過ごす午後は気持ちいい。

 晴太が琵琶湖に向かってキャッキヤと笑いながら、両手を伸ばしている。

「なあに? 晴太。キラキラが気になるの?」

 ベビーカーを押して眺める琵琶湖の輝く水面も、いつしか見慣れた風景になった。

 この地へ来てもうすぐ二年になる。

 東京を離れた私が向かった先は東北の田舎町だった。

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