内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました

「あはは。わからない? 悠だよ」
 危うく入店を断られそうになり、名乗った。

「おっと、ずいぶん変わったな。誰だと思ったぞ」

 仁がぽかんと口を開ける。

 パーマがかかった明るい髪に薄茶のカラーコンタクトレンズ。これだけでも気づかれないとは思うが、パーカーにダメージジーンズというラフな服装のおかげでかなりイメージは違うだろう。

 普段の僕はスーツか、シャツスタイルだったから。

 本当に驚いたらしい、仁は上から下まで視線を這わせてまじまじと僕を見る。

「ウィッグか?」

「うん」

「よくできてんなぁ」

「便利だよね。ハゲても心配ないよ」

「やめろ、縁起でもない」

 軽口を叩きながら、なんでもいいからと食事を頼む。

「どう? これで見た目と中身が一致した?」

「ってか、本人はどうなんだ。どっちの見た目がしっくりくる?」

「うーん。どうだろ」
 よくわからない。

 別に好きでしているわけじゃない。父の追っ手を逃れるためだから。

「俺はなんだっていいんだ、見た目なんて」

「あれ? 〝僕〟はやめたのか」
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