内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「弁護士が言ってたが、親父さんは、政略結婚が嫌だから家を出たって思っているらしいぞ?」

「あぁ……、それね」

 あの家にいる限り政略結婚は免れない。決定事項だと父は言った。

『好きな女と結婚できないから出て行くというのか!』

 そうじゃないと言ったところで、父は納得しない。というか父だって、本当の理由はわかっているだろうに。
 こうする以外にないと。

「ようやく、シルKUを辞めるきっかけができただけなんだけどね。父には寝耳に水だったみたいで」

「ずっといてほしかったんだろうな、親父さんは」

 まあね、そうかもしれないが、そうじゃないかもしれないし。
 僕にはよくわからない。

「なんかさ、神林家って、政略結婚以外の結婚はないんだってよ」

 とはいえよく聞く話で、珍しくはない。

 仁はちらりと俺を見ただけで、なにも言わずグラスにワインを注ぐ。

「ありがと」

 礼を言っていったん喉を潤す。

「昔、母が珍しく酒に酔って言ってたんだけど」

 母は酒に弱かった。その日はなにかのきっかけで飲んだんだろう。最初は楽しそうに笑ってたが、そのうち神林家の話になった。
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