内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 使用人から聞いた話では、家を出て行くその朝も、クラシックを聞きながら普通に食事をして、穏やかな会話をしていたのだそうだ。

「離婚はしたんだよな? 今の夫人じゃないだろ?」

「ああ。俺の母が姿を消して、跡継ぎが必要になったから離婚したみたい」

 当時は僕の存在がわかっていなかった。
 もし僕が引き取られていれば、本妻は離婚をしなかったのかもしれない。

 今の父の妻。若い後妻も資産家の令嬢だ。
 結婚してすぐ双子が生まれた。

 なぜ結婚相手が資産家でなければいけないのか父に聞くと、万が一のときのためだと答えた。

 結婚によって一族は金と人脈という、強い絆で結ばれる。

 現に義母の父はホテルチェーンを展開しているが、シルKUの大口の顧客でもある。逆にシルKUはなにかにつけ義母の父のホテルを利用し関係をより太いものにする。

 そうやって上流階級の輪の中だけで、金と人が回るのだ。

 僕の母はその世界の住人ではなかった。

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