内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 髪の隙間から覗く目が私を捉えたのか、ペコリと頭を下げた。

 私も慌てて頭を下げる。

 今までは隣が空いているから気を遣わず済んだけれど、今後は晴太を泣かせないように注意しないといけないな。

 突然訪れる夜泣きを思い出し
 ふぅ、とため息が出た。



***



 守から千絵が大阪に来ると、密かに連絡があった。

 千絵は気づいていないが、彼女が東京から消えたあと、心配した守は紫Viola経由で僕に辿り着いている。

『姉ちゃんが一方的に非通知で電話かけてきて、捜すなって言うんだ』
 千絵は本気で身を隠すつもりだったんだろう。
 最初のうちは、守にまで連絡先を教えなかった。

 一度だけ神林家の弁護士からも、守に連絡があったらしい。
 千絵さんに折り入って話があると言っていたという。

『神林の弁護士を信用するな。千絵と連絡がついても絶対に弁護士に居場所を教えちゃいけない』
 僕は守にそう伝え、それからも連絡を取り合っていた。

 ベトナムから帰国すると、千絵が消えていた。

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