内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「はーい」

 ドアを開けると、男性が手にした菓子箱を差し出してくる。

「つまらないものですが、よろしくお願いします」

「ありがとうございます、こちらこそ。どうぞよろしくお願いします。子どもがうるさいかも――」
「おーっ、かわいいなぁ~」

 ひょっこりと首を伸ばして室内を見た彼は、晴太を見たらしい。

 あれ? この人、さっき見た人とはちょっと違うような。

 そういえば、こんな茶髪じゃなかったよね?
 髪型も違う?

 マスクをしているから顔もよくわからないけれど。

「赤ちゃんの名前は?」

 声が、え?
 聞き覚えがあるような気がするのは気のせい?

 まさか――。
 いやでも左目の目尻の下にある小さいホクロは。

 ドキドキと胸が高鳴る。

 違うよね。
 だって、ここにいるはずがないもの。

「なんて言うんですか?」

「え? あ、晴太です、けど……」

「ハルタかー。失礼しまーす」

「あっ、ちょっ!」

「はるたー、パパだよ~」

 男性はマスクとウィッグをするりと取った。

 ゆ、悠?!

 嘘でしょ。
 幻? って、そんなわけ――。
「あ、あの、ちょ……」

 気持ちが落ち着く間もなく、またピンポンとインターホンが鳴った。
「はーい」

 動揺していたせいで、考える間もなく玄関の扉を開けた。
 ああもう、なにがなんだか。
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