内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 また怒られて、さすがにまずいとうつむいた。

 でもさぁ……。と、心でつぶやいたけれど、言い訳をするのも気が引ける。

 酷いのは自分だという自覚はあるし、怒っても当然なだけ心配かけたから。
 ただただ申し訳なくて。

 だからって、言うべきことが言えない。

 違うよ。晴太は悠の子じゃないよって、言わなきゃ、と思う。なのに言えなくて……。

 代わりに熱いものが胸の奥にこみ上げてくる。

「ごめんなさい。黙っていて」

 とりあえずあやまったものの、あとの言葉が続かなかった。

「まぁ、いいよ。おいおい聞かせてくれれば」

 手を伸ばした悠は、グリグリと私の頭を撫でる。

「ありがと。晴太をここまでひとりで育てて大変だったね」

 上目遣いでチラリと見ると、打って変わって目を細めた悠がにっこりと微笑む。

「悠……」

「ちゃんと籍を入れなきゃね」

 喉もとまで反論が出たけれど、その前に瞳が滲んでくる。

 悠の優しさが、今までの頑張りを涙に変えてしまったみたい。

 ずっと、必死に耐えてきたのに。
 絶対に悠には心配かけたくないって……。

「千絵はひとりでがんばろうとし過ぎ。頼ることを覚えなきゃダメだ」

 私は手を伸ばした。
 笑顔の悠に向かって、涙でよく見えないけど、精一杯。

 晴太を真ん中に挟んで、悠の肩で泣いた。

「ごめんね……悠」

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