内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 今日、私は早めに家を出た。

 パーティーは夕方だけれど、それまでに向かう場所がある。

 行き先は神林家。弁護士には密かに連絡をしたのだ。

 悠のお父さまに会って、お願いしなきゃいけない。

 このままでは後で後悔するから。

 つくばエキスプレスで秋葉原に行くと、弁護士さんが駅まで迎えに来てくれていた。

「こんにちは」

 五十代と思われるこの男性の弁護士さんと会うのは、大阪で会って以来になる。

 あのときは本当に悠の行き先を知らなかった。

 嘘は言っていないし、悪事を働いてもいないけれど、今は悠と籍を入れて晴太という子どもまでいる。

 正直、気まずかった。良く思われるような要素はなにひとつないし。

「それでは参りましょう」

「はい」

 弁護士さんは私を後部座席に乗るよう促して、自らがハンドルを握る。

 なにを言われるのかとドキドキだったけれど、弁護士さんはずっと無言のままで、車にはラジオの音だけが響いている。

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