内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 なにか聞かれても返事に困るから、別にいいんだけれど、居心地は悪い。

 ため息をついて外を見た。

 都内は二年ぶりのせいか、人の多さに圧倒されそうだ。

 私はもう、ここには戻らないだろうなと、ふと思う。今のように静かな田舎での暮らしが向いているから。

 でも悠は違う。体を使って汗を流すより、スーツを着てここを颯爽と歩くほうが似合っている。

 私と晴太のために無理をしている……。

 でもそんなのはうれしくないよ?

 悠……。

 ごめんね。私がビッチだなんてくだらない嘘をついたせいで、こうなったんだよね。あのときしっかりと断っていれば、道をはずしたりせずに済んだんだから。

 つらつら悩み考えるうち、車は神林家に到着した。

 大きな門をくぐっていく。高級住宅地なのに、つくばの我が家の庭くらい広い。

 弁護士さんに扉を開けられてから車を降りた。

 邸の荘厳さに押しつぶされそうだ。心臓がドクドクと大きな音を立てて、手が震える。

「どうぞ」

「はい」

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