内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「今さら、それを知ってどうすんだい?」

 お父さまは、薄く口角を上げる。

「私が原因なら、なんとしてでも――」

「また行方をくらます?」

 しっかりと、うなずいた。

 ただ闇雲に晴太を連れてどこかに消えたところで、悠がこの家に戻るとは思えない。

 でも、手紙を残せばきっと大丈夫だと思う。

「悠がこの家に戻ったら、私も安心して悠のもとに戻ると伝えて家を出れば、きっと大丈夫だと思うんです。あ、もちろん私が戻るというのは嘘です。私は自分の立場をわかってますし」

 ハハッとお父さまは笑う。

 と、そこにコーヒーが届いた。

「君がそうしたところで、私が恨まれるだけだろう。実際手切れ金を渡したと知って、かなり怒っていたしね。あらためて絶縁になるだけだと思うよ」

 お父さまはコーヒーに手を伸ばす。

 そうか、手切れ金の話はお父さまとしていたのね。

「あのときはすまなかったね、悠のためだと思ったんだが」

「いえ、いいんです。正直あのお金が心の支えになりましたから」

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