内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました

***



 千絵が帰ってきたのは夜の九時近くだった。

 久しぶりだから、泊まってゆっくりしておいでと言っておいたのに、心配だったんだろう。

 晴太を寝かしつけていたときに、そっと扉が開いた。

「ただいま」と、ささやき声で晴太の顔を覗きこむ。

「さっき、寝たとこ」

 晴太の寝顔に安心したように千絵はにっこりと微笑み、そっと寝室を出た。

「おかえり。早かったね」

「うん。やっぱり気になっちゃって。泣かなかった?」

「朝のうちはちょっと泣いたけど、その後は大丈夫。そのかわり片時も僕のそばを離れなったけどね。さんざん遊んだからぐっすり寝ると思うよ」

「あはは。お疲れさま。駅ビルでおいしそうなお惣菜買ったんだ。たまには飲まない?」

「いいね。とっておきのワインがある」

 千絵が着替えを済ませている間に、お惣菜をお皿に盛り付けてグラスも並べて準備をする。

 最近はすっかり家事が板に付いてきた。

 まあ、無職のようなものだし家事くらいできないと。

「あ、準備してくれたんだ。ありがとう」

 並んだお惣菜を見た千絵は、手早く大根とハムのサラダを作って追加する。

 働き者でかわいい奥さんだ。

 近所のおばちゃんたちともすっかり仲良くなって、漬け物をもらってきたり、この前は手前味噌の作り方を教わってきた。

 ネットで造花やドライフラワーのリースや飾り物を売ったりもしている。
 趣味だとか言いながら『万がいち、悠が一文無しになっても、私が養ってあげるから』とやる気満々で楽しそうだ。
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