内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 経済的には不安はなくても、このままでいいはずがない。

 結論が出せずにいる僕を千絵は温かく見守ってくれているが、この暮らしを本当はどう思っているんだろう。

 ずっと付いてきてくれるだろうか。
 どんな答えを出したとしても。

 僕が父の代わりに責任を取って辞めようと思ったのは、僕が原因でもあったからだ。

 カレンとの縁談を断って、カレンの父である頭取はへそを曲げた。スムーズにいっていたはずの銀行との関係がここへきて怪しくなり、反対勢力にそこを突かれたのである。

 僕が家を出ればカレンの父の気も済むだろうという予想通り、一度は歪みかかった融資の話は軌道修正された。

 だが、このままではいけない。事業とは全く関係のないそんな理由で歪むなどあってはならないのだ。シルKUのために、時間をかけてでも修正していかなければ。


「かんぱーい。やっと飲めるー」

 千絵は、万歳するようにしてソファーに腰を沈めた。

「え? 全然飲んでこなかったの?」

「うん。なんとなく、やっぱり気になっちゃって。こうやって家飲みするほうが安心だし楽しいしから」

「そうか」

 かわいいことを言ってくれるな。

< 150 / 158 >

この作品をシェア

pagetop