内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 警備員のおじさんはそのまま歩き出したけれど、私は目が離せなかった。

 無意識の奥の方で、なにかが心に訴えてくる。

 彼がイケメンだという理由だけじゃないと思う。喉の奥まで出かかっているのに、すっきりと思い出せない。

 ジッと見ている私の視線に気づいたのか彼が首を動かしたところで、ハッとして我に返った。

 おっと、危ない危ない。

 ガン見だなんて失礼にもほどがある。慌てて視線を落とし片付けを再開した。
 社員さんたちが出勤する前に退散しなきゃいえないのに、イケメンに気を取られている場合じゃない。

 大きいトートバッグにゴミ袋を入れて、床に敷いたシートを畳み始めると、落ちている一枚のカードが目に留まった。

 あ――。

 セキュリティカードと思われるそれは、さっきまでそこにはなかった。

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