内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました

「――へ?」

 今なんて言った?

 はて、聞き間違いか?

 まさかの聞き間違いでない場合に備えて、咄嗟に掴んでいた手を離す。

 セッ、ク、ス?

 悠の口から、そんな言葉がでてくるはずが……。

「あはは。ごめんごめん。無理だよね。気にしないで」

 明るく笑うけれど、悠は下ネタの冗談を言うような人じゃないはずだ。

 無理に言わせたのは私だし、のっぴきならないわけがあるのかもしれない。もしかしたら、とても深刻ななにか。

「あの……、理由を聞いてもいい?」

 悠は恥ずかしそうにうつむいている。

「実は経験がなくてね。女の子ならまだしも、いい歳した男が恥ずかしいだろう?」

「え? そんな理由?」

 顔を上げた悠は、心外だとばかりに私を睨んで、ため息をついた。

「わかってないな。重要な問題だよ。千絵と同じで恋はしなくてもいいけど、僕は、結婚はしたいと思う。自分の家族を作りたいしね」

「うんうん」

 大きくうなずいた。
 その気持ちはよくわかるから。
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