内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました

「問題点? それはどういう?」

「経費です」

 案の定、彼の眉間の縦皺はいっそう深くなった。
「またその話ですか」

 人は皆、金が足りない話になると不愉快になる。仕事においてもプライベートにおいてもそれは同じだろう。

 だがその現実は、決して避けては通れない。

「何度でも言います。求められているのはコストダウンです」

「これ以上は無理ですよ。副社長だってわかっていらっしゃるでしょう?」

 ああ、わかっている。さんざん検討した結果なのだから。

 その後も堂々巡りの会話を繰り返し、主任は苦虫を噛み潰したような顔をして、部長に促されながら執務室を出ていった。

 後に残った秘書の岡安がため息をつく。
「申し訳ありません。止められず」

「いや、かまわないよ。どこかにぶつけないと収まりはつかないだろうし」

「ですが、もともと副社長は――」


 いいボディソープだと思う。
 彼が今回開発した石鹸は漢方を取り入れ、健康な肌に整えるのを目的とした素晴らしい製品だ。なおかつ絹のようにきめ細やかな泡も、すっきりとした爽やかな香りもいい。洗いあがりもしっとりと潤う。
 だが、認めているのが僕ではね。
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