内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 悠はイケメンだけど、頭が良くて人柄もいいから無敵なだけよ。
 ついでに言えば運動神経だっていいわ。夕べだって私を軽々と抱き上げちゃって、腹筋だってちょっと割れてたんだから。

「仕事もできるんじゃない? じゃなきゃ御曹司ってだけで副社長にはなれないでしょ」

「そうすかー? 親の七光りで人生ちょろいってやつかもですよ」

 ちょっとちょっと。
 体をひねってヒサ君を睨んだ。

「ヒサ君ってほんと失礼だね」
「あれ? 千絵さんイケメンの味方ですか」

「うるさいな。まじめに運転してね。危ないでしょ」
「へーい」

 悠はこれから打ち合わせに行くのかな。
 寝不足だろうに、って、え?

 ちょっと待って。どうして言ってくれなかったの。

 まずいでしょ、一流企業の副社長だなんて知ってたら私だって、あんな嘘つかないよ。
 絶対まずいって!

「あー、どうしよう!」
 じたばたと地団太を踏むと、「うおっ」と仰け反るようにしてヒサ君が振り向いた。

「な、なんすか、いきなり、ビックリさせないでくださいよ」

「ごめんごめん、前向いて。ほらぁ、危ないから」

「それはこっちのセリフですー」

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