内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 コーヒーをひと口飲んで、ゆっくりと間を置いてから答える。

「いえ。まだそこまでの話には、なっていません」

「あらそう。じゃあ、適当に受け流しておくわね」

 残念そうにため息をつく義母の横で双子がはしゃぐ。
「にーに、けっこん?」

「お兄さまは、お嫁さんをもらうのよ」

「およめしゃん?」

 口を開くだけでこの場が和むという子どもの特権だ。

「やー、にーにのおよめさんは、ノアなの」

 両手を僕に差し伸べて妹がぐずりだす。

「そうだったね、ノア。ごめんごめん」

 半分とはいえ血が繋がっているからなのか、こういうときは心からかわいいと思う。

 義母は五年前に父と結婚しこの家に来た。

 年齢も四十そこそこなので見た目にも若い。

 なにごとにもわきまえた人で、結婚当初すでにシルKUの重役となっていた僕には遠慮があるらしく、強い態度には出ない。

「しばらくマンションに寝泊まりします。残業が続きそうなので」

「あらそう。昨日も帰らなかったのに、相変わらず忙しいのね」

「えー」

 双子がつまらないと騒ぎ立てた。

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