内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「仕方ありません。社長の決定にもっともらしい理由をつけなるのが僕の役割ですからね」

 秘書は曖昧な笑みを浮かべ、困ったように視線を落とす。

 すべては今更だ。言ったところで始まらない。

 僕の父である社長はそういう人だから。

 営業を動かせれば違うかもしれないが、今の営業部長は社長の意のままにしか動こうとしない。若手の営業とでも手を組めるだけの謙虚さが、主任の彼にあれば道は拓けそうだが、恐らく無理だ。

「なにか?」
 岡安はまだなにか言いたそうにみえる。

「もったいないと思いまして……」

 彼は父が僕につけたベテランの秘書だ。僕の監視が仕事だろうに、時々こんなふうに心から僕を心配するような顔をする。

「――そうですね。聞けば髪も洗えるそうだし、思い切ってターゲットを男性にするとか。昨今男性も匂いを気にしますし。広報の深雪さんのような女性を味方に付けられれば違うかもしれませんが」

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