内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 ごもっともな後輩からの指摘に、心から反省する。
 そうだよね。これじゃ社会人として失格だ。

 反省して気を引き締めた矢先。
 店長が「千絵ちゃん、あさってのシルKUの手伝い頼むわ」と、恐ろしい仕事を持ってきた。

「え? シルKU、ですか?」

「ミーちゃんが行く予定だったんだけど行けなくなっちゃったからね」

 店の奥からミーちゃんが苦笑を浮かべてぺこりと頭を下げた。

 彼女は昨日、荷物を落として足の親指を傷めてしまったのだ。骨折はしていないものの、足をいたわりながらそっと歩いている状態だ。確かにあの状態では行けない。

「あ、ミーちゃん、大丈夫、気にしないで」
 慌てて手を振った。

「えっと、何をするんでしたっけ?」

「エントランスホールでバレンタインのイベント。金額によって、ランの花もおまけにするんだって」
「あ、なるほど」

 保水キャップをつけた一輪のランはよく使われる。日持ちもするし手入れも必要ない。一輪でも十分存在感があって綺麗だから。

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