内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 そして――。

 神林家の弁護士と名乗る人が紫violaに現れたのは、その次の日だった。

 男性は名刺を差し出し「神林家の使いで来ました」と告げた。

「今日は何時にご帰宅ですか?」

「四時半か五時ごろになるかと思います」

「わかりました。ご自宅の前でお待ちしております」

 弁護士事務所にでも飾るのか、出来合いの花束を買っていった男性が消えると、ヒサ君がまたひょっこりと顔を出す。

「今度は弁護士っすか」

「なんでわかるのよ」

「バッチつけてましたもん」

「まったくヒサ君ってほんと目敏いのね」

「で? 今度はなんなんです?」

「なんでもないわよ。ご相談でもあればって、営業じゃない?」

 弁護士が、こんなとこで営業なんてとブヅブツ言うヒサ君を尻目に、私はため息をつく。

 参ったなぁ。
 なんなの、悠がいなくなった途端に総攻撃?

 夕方。わざとじゃないけれど、いや、少しだけわざとだけれど、予告した時間よりも十分遅れの五時過ぎにアパートに着いた。
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