内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「店長、ちょっとお話が。仕事帰りにでもいいですか?」
そう声をかけたときに、店長はすでに予測はしていたのかもしれない。
お店を辞めたいと言ってもあまり驚かなかった。
いつになく真剣に、後輩たちに技術を教え込んでいたし、最近ミスも多く、様子がおかしいと心配しているようだった。
店長なりに、なにか感じていたんだと思う。
「わかった」と寂しげに微笑んだ。
私は真面目に仕事に取り組んできたつもりだし、店長は私を信頼してくれている。
培ってきた信頼を失うのは辛いが、店長には事情を知ってほしかった。
突然、すべてを秘密にしたまま責任を放り投げて退職したのでは、店長の心に裏切られた気持ちだけが残るだろう。傷つけてしまうと思う。
私が一番お世話になってきた大切な人の、純粋な心に、傷を残したくはない。
たとえ気持ちがわかってもらえないとしても。
それでなくても、悠を深く傷つけてしまうのだから、せめて店長には……。