帰ってきた童貞くん

ナースの人

 20代の前半。
 腹が減れば、とにかく白飯ばかり食べまくっていた。
 多い時なんかは、大盛カップ焼きそばをおかずに白飯3杯も余裕だった。
 なのに、太らず体重は57キロ前後をキープするから恐ろしい。

 母がいないときは、男三兄弟なので、各々が冷蔵庫のあまりものを出して食べる。
 といっても料理は基本しない。
 生卵があれば、それを白ご飯にかけて醤油たして、卵かけごはんのできあがり!
 それを何杯も食べる。

 ある夏の出来事。
 数週間も冷蔵庫に放置してあった生卵を僕が使ったため、高熱と下痢を繰り返し、急遽、かかりつけの大学病院に入院することになった。
 持病の方か? と医師に疑いをかけれられたが、のちに生卵による食中毒と判明した。

 計2週間ほどの入院だったが、かなりキツかった。

 食事を出されるが、高熱のために口に入れることもできず、ただ点滴で栄養を摂取するのみ。
 腕に注射針を刺しすぎて、皮膚が硬化し、針が刺さらなくなるほど、両腕をブスブスと刺されまくった。
 
 僕が若い男の子ということもあってか、年上の看護婦さんによく説教された。

「あっ! 童貞くん! また食べてないの? だから、点滴はずれないのよ!」
「いやぁ、きついっす……」
 そういうナースの一人は、パイ子さんだ。
 確か人妻で、とても優しい女性だ。
 しかし、若い僕からすると一つだけ、彼女に苦手なところがあった。

「仕方ないわねぇ。じゃあ点滴かえましょっか♪」
 そう言うと、なぜか点滴の袋を僕側から替えようとする。
 逆側から変えれば、なんのこともないのに。
 彼女は毎回、僕の頭上から替えたがる。 

 パイ子さんは言っちゃ悪いが、かなりの巨乳だ。
 制服のトップがぱっつんぱっつんになるほど。
 揺れはしないが、デカい。
 目のやり場に毎回、困る。

「うんしょ……」
 そう言って、僕の頬に二つのデカいメロンをぶに~! と押しつける。
「ふごごご…」
 あまりのデカさに、僕は息ができない。

 たぶん、天然な人なのだと思うが、毎回だ。
 体温を測るときも、必ずといって、胸をおしつけてくる。

「これでよしっと♪ さ、童貞くん。早く治して退院するのよ!」
「は、はぁ……」
「そのためにはご飯をしっかり食べなきゃ!」

 まさか……あの人! 僕に惚れているのかもしれない!?
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