地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!
 魁吏くんったらすぐに口が悪くなるんだから。
 そんな私たちをにこにこと見ていたおばさんが、とんでもないことを言った。
 「カップルで夏祭りデートなんて、いいねぇ」
 「えっ!?」
 カップルって、私と魁吏くんが・・・!?
 ないないないないないないない。
 いや、ここまで否定したくはないんだけど。
 今は恋人なんかじゃない。
 ・・・じゃあ、今の私と魁吏くんの関係ってどんな名前なんだろうね。
 友だち、もなんか違う気がするし同居人、もよそよそしくて嫌だなあ。
 固まってしまった私に、おばさんが声をかける。
 「カップルじゃなかった?雰囲気があまりにもそんな感じだったから、おばさん勘違いしちゃった」
 雰囲気があまりにもそうだった、ってどういうこと・・・?
 カップルに間違われる雰囲気って何・・・?
 再びフリーズする私の手を握って、ずっと黙っていた魁吏くんがおばさんに向かって一言。
 「・・・まあ、それみたいな感じです」
 「はっ!?」
 「ああ、やっぱり?なんだ、彼女さん恥ずかしがってただけなのね」
 それみたいな感じって何!?
 魁吏くんが変なこと言うせいで、おばさんに勘違いされちゃったじゃん!
 「じゃ」
 「あ、ちょっと魁吏くん!」
 軽く会釈して、魁吏くんは私の手を握ったまま射的の屋台を離れた。
 少し離れたところで、手も解放される。
 魁吏くん、どういうつもりなんだろう。
 『それみたいな感じ』って、嘘をついてわざわざ勘違いされて。
 エイプリルフールには、まだまだ遠いよ?
 「魁吏くん、なんであんな嘘ついたの?」
 「・・・・・・」
 口が悪いと思ったら、今度は黙秘を貫くんだから。
 黙秘を貫くって、警察の取り調べとかで弁護士を待っている容疑者かなんかか!
 私の胸の中では、ひとりツッコミ劇場が繰り広げられる。
 いいや、魁吏くんに答えてもらうのは諦めよう。
 それよりも、次の思い出づくりだ。
 さっき取ってもらったくまの人形は、魁吏くんとの花火大会の思い出第一号。
 絶対に部屋に飾るんだ。
 魁吏くんとお祭りにくるなんて・・・もしかしたら、これが最後になるかもしれないし。
 悔いのないように、色んな思い出をつくっておきたい。
 「魁吏くん、どこに行きたい?」
 ―――ぎゅっ。
 ん?
 後ろから誰かに、足に抱きつかれる。
 不思議に思って後ろを見てみると。
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