太陽のヒカリ(短編)
「すごい濡れてたもんだから…。……大丈夫…?」
初めて会った知らない人に、心配してもらってる。
人目も気にせず大泣きしてたことになんだか恥ずかしくなって
『大丈夫です…。』
と、一言だけ答えてうつむいた。
彼はそんな私に気を使ったのか声のトーンを上げて明るく言った。
「あ、あの俺、桜木男子高校の2年。橋本太陽ってゆうんだけど…」
照れくさそうに私を励まそうとする彼の優しさに魅力を感じた。
『2年?…なら同い年だね。』
私は涙を拭いて、鼻をすすった。
『私は矢野ヒカリ。』
ようやく私が微笑んだことに、彼はホッとしたような笑顔を見せた。
「その制服は有明高校だよね?」
『うん。』
反対側の線路にもうすぐ電車が到着する合図が鳴った。
「ほら、もうすぐ晴れるよ。」
『えっ?』
私は彼が見上げた空を
同じように見上げた。
そこにはさっきまでの大雨が嘘だったかのように、
雲の隙間から太陽が覗き始めているのが見えた。