太陽のヒカリ(短編)
また会いたい。
私、まだ何も言ってない。
嬉しかった。
ただお礼がしたい!!
だけど電車から大勢の人が降りてきて、
雑音のせいで咄嗟に言葉が見当たらなかった。
「また会えるといいね、ヒカリちゃん。」
彼はにっこり笑って手を振り、電車に乗り込んだ。
『ありがとう!!』
最後に必死に叫んだ一言は
ちゃんと聞こえていたかな?
また会えるかな?
動き出した電車の中から
彼が見えた。
扉の近くにもたれるように立った彼は
目が合うと
笑ってくれた。
聞こえてたんだよね?
『橋本太陽……か…』
空を見上げるとすっかり雨はあがって、晴れていた。
『あ……』
私の手には貸してくれた青いタオル。
もう恋なんかしないってまた思ってた。
橋本太陽、
あなたと出会い、
あなたへの恋が始まった日だった。
まだ何も知らずに…