幼なじみの憂鬱
「ほら、朝陽、そんなとこに座ってないで、こっち来てあいさつしなさい。
凪咲ちゃんだって。朝陽と同じ小学校に通うんだよ」
年齢も同じ。
小学校も同じ。
もう少し早く来てくれてたら幼稚園だって一緒だったかもしれない。
だけど、何はともあれ、私の理想の恋愛の形に近づいたわけだ。
そう思った。
そして母親に呼ばれて私の前に現れたのは…
__この人が、私の、幼馴染み。
運命の、相手。
そこにいたのは、私より少しだけ背の低い、もさもさ頭の男子だった。
そして朝陽は、イケメンではなかった。
クラスの人気者でもなかった。
朝陽と一緒にいても、男女からの冷やかしはあっても、女子からの嫉妬はなかった。
冷やかしに朝陽が反応することはなかった。
代わりに私が、「そんなんじゃないよ」、「朝陽とそんな関係になるわけないじゃん」、「ただの幼馴染みだよ」、ついでに、「朝陽をいじめるなあ」と、悪ガキ退治をする始末。
確かにこんなのも幼馴染みによくあるパターンなんだけど、私の理想とは正反対だった。