幼なじみの憂鬱
朝陽はといえば、いつもぼんやりとしていた。
いつの間にか友達の輪を離れて歩いていた。
出会った頃から変わらない髪型、いつも伏しがちな目、頼もしくない体つき。
ため息ばっかりついて、空ばかり仰いで、自分に自信がなくて、なんだかパッとしなくて、地味で存在感が薄い。
正直幼馴染みとしては物足りない。
それでも、私の幼馴染みの相手は、朝陽しかいなかった。
もうこれはしょうがない。
これがどう恋に発展していくのか、私にはわからない。
それなのに、私はかれこれ10年近く理想の幼馴染みの恋を追い続けている。
朝陽を相手に。
だって、私の幼馴染みは、朝陽しかいないんだから。
それに、朝陽とだって、もしかしたら……もしかするかもしれないでしょ?
こうして今日も朝陽と玄関先の階段に腰かけて話をするのだって、幼馴染みの特権だと思っている。
だけど相手が朝陽なら、誰も羨ましがらないだろう。
それでも私にとって、朝陽は特別な存在だ。
幼馴染みなんだから。
朝陽にとっても、私は特別な存在であってほしい。
いや、あるべきだ。
朝陽も私のことを、そう意識しているに違いない。
そうじゃなかったら、毎晩こんなふうに顔をつき合わせて話をしないでしょ?
だって幼馴染みだよ。
女子が憧れる恋愛パターンの代表じゃん。
私たちの関係は、友達でもなく、恋人でもない。
その中間の、特別な関係。
それが、幼馴染み。
二人の間に入れるものは、何もない。