幼なじみの憂鬱
「何よ。自分と気の合う友達ができて嬉しいんじゃないの?
朝陽には珍しいというか、貴重な地味トモができたってことでしょ?」
「地味トモって……」
「それとも何? あいつとの間に、なんか問題でもあったりするの?」
「問題ではないけど……」
朝陽はそう言って、今度は切ない表情を空に向けた。
夜空の星に何か問いかけるような目は、星の煌めきを反射させない。
「完全には、似てないんだよね、これが」
「どういうこと?」
「あいつ、実はすごく頭良いんだよね。この間の学力テスト、総合で学年8位だよ」
「へえ。朝陽は?」
「僕は、76位。真ん中よりちょっと下」
朝陽らしくパッとしない成績だ。
「それに、あいつ運動神経も良くて、体力テストの成績すごく良くってさ。
50メートル走は7秒台前半だし、シャトルランは余裕で100回超えてたし」
「へえ。すごいね、それは。で、朝陽は?」
「僕は、全部平均記録より、良かったり悪かったり」
やっぱり、朝陽らしい。
褒めるところもなく、けなすところもなく。
「僕と一緒にいるけど、ほんとは誰とでも仲良くできるんだ。
学校で目立つ奴とか、学校で人気のある人とか。
そんな人たちとも気さくに話したり、話を合わせたりできるんだ」
「人当たりが良いんだ」
「そうなんだよね。でも、基本目立つのが嫌いだからさ。
シャトルランも、ほんとはまだ余裕だったけど、一人残ると目立つじゃん。
だから途中でやめたんだよ」
「へえ。私はそういうの、好きじゃないけど。
朝陽は、そんなことしないでしょ?」
「しないというか、そもそもそこまでいかないからね。
とにかく、成績が良くても、運動神経が良くても、サッカーが上手くても、人から話題にされないというか。
話題にされないようにしているというか。
ほんとに、いるのにいないふりをするのが上手いんだよ」
「部活に遅れてきても、いなかったのにいたふりするのも上手いし」と朝陽はおかしそうに笑って付け足す。
だけどまたすぐに、寂しげな顔に戻ってしまう。