幼なじみの憂鬱
「あいつは、ほんとにすごいんだ。
雰囲気や空気感は僕と似ているし、僕も一緒にいるのは楽しいよ。
居心地がいいというか。
あいつが僕と一緒にいてくれる理由なんて、それしかないと思う。
地味で目立たない僕といる方が、楽なんだ。
まあ僕も、それはそれでいいんだけど。
でも、時々、あいつは自分とは違うんだって思い知らされると、なんて言うか…」
言いよどむ朝陽に、私はその気持ちを代弁してあげるつもりだった。
「寂しい?」
それなのに朝陽は、「いや……」と言って少し考えてから、強い眼差しで言った。
「悔しい」
見たことのないその表情に、体がぞくぞくと震える感覚がした。
「あいつは、僕と似ている。だけど、どこか違う。しかも、全然違う。
それを、悔しいって思う時があるんだ。
かつみのくせにって」
その時初めて、「あいつ」の名前を知った。
「かつみ……」
私もその名前を、ぽつりと闇の中に放ってみた。