幼なじみの憂鬱
本田君とは中学は違うけど、テニスの試合で見かけることが多かったし、練習試合でうちの学校に何度か来たこともある。
本田君はテニスが上手かった。
それだけじゃない。
イケメンですらりと背も高くて、引き締まった体に学校指定のダサい白のテニスウエアがまぶしいほどよく似合っていた。
爽やかでキラキラしていて、絵に描いたような王子様。
そんな王子様を、女子たちが野放しにしておくわけがない。
本田君は他校の生徒だったけど、うちの中学でもファンは多かった。
本田君が試合に出ると、テニスコートを囲むフェンスの外側を女子たちが取り囲み、張り付いて見ていた。
中学生だけでなく、高校生、大学生、保護者の方々、先生まで、ファンの年齢層も広かった。
いつも黄色い歓声が上がっていて、本田君はフェミニンなはにかみ顔で、その声援に応えていた。
__そういえば、朝陽と同じ学校にいるんだ。
同じテニス部の先輩や同級生が話しているのを聞いたことがあったし、中学で同じテニス部だった友達も、他校であるにもかかわらずその情報を持っていたことを思いだした。