幼なじみの憂鬱
「ごめん」
そう言いながら、朝陽はよろよろと立ち上がって玄関のドアに手をかけた。
その寂し気な背中を見送るのは、いつも私の役目だ。
だけどドアを開けようとして、朝陽はぴたりと動きを止めた。
「ああ、そうだ。心当たりがあるとしたら、出席番号順かな」
「出席番号順? なんで? 今年も朝陽は彼女と前後なんでしょ?」
「うん、だけど、あいつと彼女も前後なんだよ。あいつ、彼女、僕の順番」
私は急いで、頭の中に座席表を描く。
「去年と今年の違いは、並び列。
彼女は一列目の一番後ろ。僕はその隣の列の一番前。あいつは……」
頭の中に描く座席表の中に、私はあいつの席を見つける。
「彼女の、前の席」
朝陽がそう言ったのと同じタイミングで、私は顔を上げた。
「それだけでさ、グループとかペアって変わっちゃうんだよ。
彼女の今のペアは、あいつ。
4人グループを作るときも、彼女とあいつは同じグループ。
僕から、違うグループ」
私は描いた座席表の中で、グループやペアを作っていく。
頭の中の座席表が完成したのと同時に、「はあ」と朝陽の大きなため息が聞こえた。
「あっ、でも、修学旅行のグループは6人で1グループだから、彼女と同じなんだよね」
そう言った朝陽の顔は、少しだけ明るく見えた。
でもやっぱりすぐに陰る。
「あいつとも、同じなんだけど」
複雑な表情の変化を、私は唇を引き締めて見つめた。