幼なじみの憂鬱
恐る恐るドアを開けて、その隙間から微かに流れ込んできた外気を、私は鼻から大きく吸った。
空気は信じられないくらい澄んでいた。
呼吸をするたびに、冷え切った空気が喉を通過して、肺を巡って、温かな呼気となって出てくるのがリアルに感じられた。
何度かその作業を繰り返してから、私は夜空を見上げながら外に出た。
空には、確かにちかっちかっと星が小さく瞬いていた。
だけど、星が流れてくる気配はなかった。
空を仰いで探していると、
「凪咲」
と小さな声が、流れ星の代わりに降ってくる。
囁くような声だったのに、私の体は大袈裟にびくりと反応して「ひゃっ」という高い悲鳴が上がった。
声の方を見ると、玄関先の階段に、朝陽が「しっ」と口元に人差し指を置きながらこちらを見ていた。
およそ二週間ぶりだろうか。
隣に住み始めてこんなに会わない日々は初めてだ。
いつもなら、意識しなくても一日一回は顔を合わせるのに。
久しぶりすぎるのと、二週間前の出来事もあって、一気に緊張が高まった。