幼なじみの憂鬱
「ダメだよ」
朝陽は短く、低い声でそう言った。
「あいつ、告白する前に僕に聞いたんだ。
ほんとに告白していいのかって。
だから僕、言ってやったんだ、「だめ……」って」
「だめ」の声だけ、微かに震えたのがわかった。
その声に、私の心まで震えだす。
「ダメに決まってんじゃん。なんでそんなこと聞くんだよ。
ダメに決まってんのに、どうして行くんだよ。
僕がダメって言っても行くくせに、なんでわざわざ聞くんだよ。
なんで僕の気持ち知ってて告白しに行くんだよ。
なんで付き合うんだよ」
そう言いながら、朝陽は膝小僧にうずもれていく。
膝小僧から洩れる朝陽の悲痛な声が、私の胸まで締め付ける。
「なんであいつなんだろう。
僕の方が先に彼女のそばにいたのに。
出席番号だって前後で、サッカー部で、存在感薄くて、イケメンでもないのに。
僕と同じなのに」
「……そう、だね」
思わず小さな声が漏れだした。
同情じゃない。
慰めでもない。
私も、朝陽と同じだから。
どうして朝陽の好きな人は、いつも私じゃないんだろう。
私は幼馴染みなのに、家も隣同士なのに、毎日こうして話しているのに。
朝陽のことは、私が一番よくわかっているのに。