幼なじみの憂鬱
切なげな朝陽の目が、目を見張らないと分からないような小さな小さな星をとらえる。
朝陽はまるでその小さな星に囁きかけるように、切ない声で言った。
「僕、やっぱり彼女じゃなきゃ、ダメだな。
たとえ好きな人がいても、彼氏がいても、それが友達だったとしても、僕はやっぱり、彼女のことが、好きだ」
さっきまでなかった風が吹き始めた。
その風は私の体や頬を冷たく切り付けるように流れていく。
それなのに、朝陽は顔色ひとつ変えずに、その風に吹かれている。
「どうしてかな、いつもならすぐに諦められるのに。
凪咲の一声で、僕はいつだってその恋に線引きしてきたのに。
だけど、今回は違うんだ。
一目惚れだからかな。
一瞬で「この子だ」って思ったからかな。
こんなの、初めてだから。僕の人生にもこんな運命的な出会いがあるんだね。
そんなの、これからの人生で、もうないかもしれないでしょ、こんな僕に。
だから、諦めたくないのかも」
そう言って照れながら笑う。
これもまた、初めて見る朝陽の表情。
私の知らない朝陽が、溢れ出ている。
こんなに一緒にいるのに、私はまだ、朝陽のこと、何も知らない。