幼なじみの憂鬱
朝陽にはいつも悩みがある。
いつもだいたい落ち込んでいる。
いつも自信がない。
だけどそうでない時でも、何となくため息をつく。
ため息をつくから、「何か悩みでもあるの?」って聞いてあげるけど、「別にないけど」って不思議そうな顔をする。
こんなふうに、ため息をついているという自覚がないときもある。
ため息はもう、朝陽の癖であり、生きることの一部なのだ。
ため息の元である朝陽の悩みというのは、私からしたらほんと何でもないことばかり。
「明日の発表、イヤだなあ」とか、「次の試合のスタメン、選ばれるかな」とか、「もうすぐ数学のノートなくなりそう」とか、「数量限定グッズ、買えるかな」とか。
慰めようのないものばかり。
だから私も他人事のように「何とかなるんじゃない」とか「大丈夫だよ」なんて無責任な返事を返す。
すると朝陽は、「だよね」って、ちょっとだけ肩を揺らして笑う。
そんなふうに、私たちの夜は更けていく。
二人の、特別な時間だ。
そして今日もまた、朝陽はため息をつく。