ヨルガオ-午前0時の逃避行-

「海嫌い?」


彼が訊いてきた。


「嫌いじゃないです。……ただ、夜の海を見るのは初めてだから、ちょっと怖くて」


彼は、ふーん、とだけ答える。

理解できてなさそう。


怖いと感じないのかな?



彼が適当な場所に腰を下ろしたので、1人分の距離を空けて私も座った。


「連れ出してくれて、ありがとうございました」

「……バイクどうだった?」

「あ、はい。風が気持ちよくて、楽しかったです」


バイクってもっと怖いものだと思っていたけど、そうでもなかった。

初乗りにして風を感じられたのは、なかなかいい体験だったんじゃないかと思う。


ちらっと隣の反応を窺うと、彼は無表情のまま海を見据えている。



そういえば……。

会ってから今まで、呆れた顔か無表情か、そのどちらかしか見ていない。

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