ヨルガオ-午前0時の逃避行-
そもそも由良くんって今、彼女いるのかな……。
気になる。
「由良くんって彼女いるの?」
口をゆすいでリビングに戻った私の第一声がそれ。
話には脈絡がある。
然るべき手順を取れば、こちらの質問の意図がちゃんと伝わるのだけれど。
たまにあるよね。
心の中で考えていたことの続きを声に乗せること。
私がしたのは、まさにそれ。
なんの前置きもせず、ただ気になることをそのまま口に出しただけ。
唐突な疑問に、由良くんが眉根を寄せて疑心を見せるのも無理はない。
「なんだよ、いきなり」
「ふと気になって……。これ、由良くんのじゃないよね?」
手のひらに乗ったヘアゴムを見せる。
それだけで由良くんはすべてを察したようだった。