ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「なるほどね。もし俺に彼女がいたら出ていくの?」
「え?……あ、うん。そうだね……。出ていかないと」
「安心しろ。いないから」
「本当?」
「うん」
そっか、いないんだ……。
よかった。
あれ、でも……。
私ってそういう意味で彼女がいるのか気になったんだっけ?
「つーか、彼女がいたらお前を家に連れ込んでねぇよ」
「……そういうもん?」
「普通はな」
そっか、そうだよね。
普通は恋人がいたら簡単に異性を家に上げたりしない。
夫と子どもがいるのに家に恋人を連れ込むうちの母親と、妻と子どもがいるのによそで恋人を作るうちの父親が異常なんだよ。
彼女がいるのか訊いたのは、いてほしくないと思ったから。
彼女がいたら出ていかないといけないなんて一切考えつかなかった。
私の感覚はだいぶマヒしてるらしい。