ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「それと、そのヘアゴムは俺の」
「由良くんの?……でも、使ってるところ見たことない」
「光莉が来てからは使ってないからな」
「どうして?」
由良くんは目を逸らした。
表情に変化はないけれど、明らかに言い辛そう。
「そりゃまあ……多少の身だしなみには気を使うだろ」
「身だしなみ?」
……あっ。そういうことか!
私は思わず吹き出してしまった。
「笑うな」
「ごめん。でも、なんか可愛くて」
そう言うと、由良くんが表情に僅かな不満を乗せた。
それさえも愛おしい。
私は、普段は前髪を下ろしているけど、家にいるときは上げることがある。
ヘアピンやヘアゴムを使って。
でも、そういうリラックスした姿ってあまり異性には見せたくない。