ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「……」
「……」
会話が途切れた。
海岸に響いていた私と由良くんの声が消え、波の音と、たまに後ろから聞こえる車の走行音だけが世界を奏でている。
しばらく2人だけの世界。
先に静寂を破ったのは由良くんだった。
「なんで家に帰りたくねぇの?」
「……」
「ま、言いたくないなら無理に訊かねぇけど」
再び静寂に包まれる。
詮索されるのは好きじゃない。でも、今は違う。
言いたくない。
……恥ずかしいから。
上手く説明ができないけど、私の家庭事情を話すのは恥ずかしい。
照れではなく、惨めだから。
「……うちは仮面夫婦なんです」
ぽつりと呟いた。