ヨルガオ-午前0時の逃避行-
メニューを出して、ふと。
3人組の女性客が、こっちを見てひそひそ話しているのに気づいた。
視線は触れないし、聞きもできない。
だから、見られている、という直感的な違和感だけが膨らんでいく。
「腹減ったな」
メニューを見ながら呟いた由良くんから目を逸らし、右に左に斜め後ろに視線を動かす。
違和感は当たっていた。
ちらちら向けられるのは、惹かれるのに凝視できないものを見るかのような視線。
さらには、さっきはお手本のような接客をしてくれた店員さんも、店内の様子を眺めるふりして、うっとりこっちを見ている。
前に澄ちゃんと電車に乗っていたとき、わりと空いた車両の前の席に中年の男性が座ったことがあった。
“ダンディー”
その言葉を体現しているおじ様。