ヨルガオ-午前0時の逃避行-

小さな声は消えることなく由良くんへ届く。


「仮面夫婦ってなに?」

「表面上は仲良し夫婦を装っているけど、本当は全然仲良くない。家ではほとんど会話しないんです」

「へぇ」

「お父さんにもお母さんにも恋人がいて、お互い気づいているのに見て見ぬふり。今日はお母さんが彼氏を家に連れてきたから居づらくて……」


だから逃げた。


「その間、父親は何してんの?」

「お父さんはお父さんで、彼女のところにいるんじゃないですかね」



なんで話そうと思ったのかわからない。


口を開く前にちらり映った由良くんの横顔。

それがあまりに綺麗で、引き込まれそうになった。


話しても由良くんは嘲笑(わら)ったり同情したりしない。

ふとそう思った。


だから話したのかな。

< 13 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop