ヨルガオ-午前0時の逃避行-

どのくらいの時間、そこにいたかわからない。


「いま何時?」


不意に由良くんが訊いてきた。


ポケットからスマホを取り出して、電源をつける。

画面の強い光に一瞬目が眩む。


「11時10分です」

「そろそろ帰るか。今なら12時前に着くだろ」


由良くんがそう言いながら腰を上げた。


12時……。

そっか。自分でその時間を指定したんだった。


1人でいるときは1秒が長く感じたのに、

バイクに乗ってから今の時間まで1時間弱、あっという間だった。


体感5分くらい。

……いや、それはちょっと盛った。


でも、それくらい刹那的な時間だった。




帰りも同じようにバイクの後ろに座る。

私は、自然と由良くんの腰に手を回し、身を預けていた。


芯に響くエンジン音。バイクが走り出す。


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