ヨルガオ-午前0時の逃避行-
家に着いて、合鍵を使って中に入る。
由良くんは、帰っていた。
無音の部屋。
カーテンは閉じて、電気だけがかろうじて点いている。
「ただいま」
「……おかえり」
ベッドに横になっていた由良くん。
おかえりの言葉は返ってきたけど、視線が合わない。
私は、そんな由良くんの傍に腰を下ろした。
「由良くんと柊哉くんの関係、聞いた」
「……」
由良くんからの反応はない。
私は話を続ける。
「その……由良くんが、暴走族の総長だったってことも……」
「……」
「でもね、私」
──気にならない。
だから、忘れてほしかったら忘れる。
そう言おうと思った。