ヨルガオ-午前0時の逃避行-
鼻を刺激するほどのたばこと香水の臭いが充満する車内。
私は、5人乗りの車の後部座席の真ん中に乗せられた。
左右には男が座っていて、逃げようにも逃げられない。
スマホは車に乗った直後に取られてしまって、助けを呼ぶこともできない。
臭いの他に、なんのジャンルかもわからないような音楽が爆音で流れていて、途切れ途切れに漏れる私の荒い息遣いは、男たちの耳に届いていなかった。
涙は出ないけど、息苦しい。
恐怖に飲まれないように、唯一手元に残った鞄を縋るように抱きしめる。
荒っぽい運転の車は、やがて町を離れていく。
連れてこられたのは、どこかの倉庫。
金属の臭いと僅かな照明が不気味さを演出している。
秘め事をするのに……たとえば取引とか、そういうのに絶好の場所と言えそうなここは、たぶん彼らのアジト。